老齢厚生年金などの公的年金は、所得税法上「雑所得」として、年金の支払の際に所得税が源泉徴収されることになっています。
なお、遺族厚生年金や障害厚生年金などの年金には所得税は課税されません。
その年中に受ける老齢厚生年金等の支給額が一定額以上のときは、年金の決定を受けようとする時に「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書(以下「扶養親族等申告書」といいます。)を連合会に提出すると、年金の支給額から所得控除(受給権者本人の基礎的控除、配偶者控除、扶養控除など)を受けることができます。
年金決定後は、源泉徴収の対象となる方へ、毎年10月上旬に連合会より「扶養親族等申告書」が送付されます。「扶養親族等申告書」を連合会に提出する場合の提出期限は、11月中旬です。
なお、国家公務員を退職後、再就職し、その給与等の支払者に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出し、連合会にも「扶養親族等申告書」を提出したときは、給与等と年金から重複して所得控除を受けることになり、確定申告の際に所得税を追加納付しなければならない場合があります。
こうした所得控除の重複による追加納付を避けたい方は、ご本人の判断により「扶養親族等申告書」を連合会に提出しないこともできます。
源泉徴収の対象となる年金は、その年中に受ける受給額が、65歳未満の方については1,080,000円以上、65歳以上の方については1,580,000円(年の当初から老齢基礎年金を受ける権利があるときは800,000円)以上のときです。
定期支給期月ごとの源泉徴収税額は、次の計算式により求めます。
源泉徴収税額=(2ヶ月分の支給額-1ヶ月分の控除額※1×2)×5%※2
※1 | 控除額の計算
控除額=基礎的控除額(月額)+人的控除額(月額) |
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※2 | 税率
平成27年10月以降は、支給額から控除額を差し引いた金額(1ヶ月あたり)が162.500円を超える部分の金額の税率は10.21%となります。
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次の受給権者の区分に応じた控除額となります。
受給者の区分 | 基礎的控除額 |
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65歳未満の方 | 老齢厚生年金の支給金額の月割額×25/100+65,000円 (計算した金額が90,000円未満のときは 90,000円) |
65歳以上の方 | 老齢厚生年金の支給金額の月割額×25/100+65,000円 (計算した金額が135,000円未満のときは135,000円) |
(注) | 「月割額」は、年金額を12で除して得た額で、その額が4の整数倍でないときは、4の整数倍に切り上げます。 |
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次の1.~5.欄により求めた金額の合計額となります。
この表は右にスクロールできます。
区分 | 内容 | 人的控除額 |
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受給者本人に係るもの | 1. 障害者 |
22,500円 35,000円 |
2. 一般の寡婦 |
22,500円 30,000円 22,500円 |
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控除対象配偶者及び扶養親族に係るもの | 3. 控除対象配偶者 |
32,500円 40,000円 |
4. 控除対象扶養親族 |
1人につき 32,500円 〃 52,500円 〃 40,000円 |
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5. 3.、4.および16歳未満の扶養親族の方が |
1人につき 22,500円 〃 35,000円 〃 62,500円 |
(注1) | 「障害者」とは、身体障害者手帳などの交付を受けている方をいいます。 |
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(注2) | 「特別障害者」とは、障害者のうち心身に重度の障害がある方をいいます。 |
(注3) | 「控除対象扶養親族」とは、16歳以上の扶養親族の方をいいます。 |
(注4) | 「特定扶養親族」とは、控除対象扶養親族のうち19歳以上23歳未満の方をいいます。 |
所得税法の改正により、平成23年分から16歳未満の扶養親族の者に対する扶養控除は廃止となりました。
ただし、その扶養親族の者が障害の状態にあるとき、障害等級と受給権者との同居の有無に応じて、障害者・特別障害者及び同居特別障害者の控除を受けることができます。
源泉徴収税額=(2ヶ月分の支給額-控除額※)×10%
※ | 控除額の計算
控除額=1ヶ月分の支給額×25%×2 |
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復興特別所得税=年金から源泉徴収される所得税額×2.1%
老齢厚生年金などの公的年金は、所得税法上「雑所得」として、年金支給の際に所得税の源泉徴収を行いますが、給与所得のように「年末調整」による税額の精算を行いません。
老齢厚生年金のほかに給与所得等がある場合には、年金と給与所得等からのそれぞれの徴収税額を合算した「合計税額」と、年金と給与所得等とを合算した所得の総額に対する「年税額」との過不足額を確定申告で精算することになります。
また、その年の所得が年金だけの場合でも、雑損控除、医療費控除、生命保険料控除、損害保険料控除、住宅取得等特別控除など受けられるときは、確定申告で精算することになります。
なお、公的年金等の収入金額(年金額)の合計が400万円以下で、かつ、公的年金以外の所得金額が20万円以下である場合は、確定申告は原則として不要になりましたが、市区町村への住民税の申告が必要です。